紹介
2014年刊行、青崎有吾先生の作品
裏染天馬シリーズの第三弾
前作 「水族館の殺人」のあらすじ、感想記事⇩
前2作で起こった事件のトリックについてのネタバレはないので、この本から読んでも大丈夫そうだが、前作で容疑者の一人であった人物も登場するので、シリーズ1作目と2作目を読んでから読んだ方がいいと思う。
読んだことない人はシリーズを順番に読むことをおすすめします。
シリーズ1作目の「体育館の殺人」あらすじ、感想記事⇩
各短編のあらすじ
『もう一色選べる丼』
学食の脇に食べ残しのどんぶりが放置されていた。
返却しないとペナルティがあるのに、
なぜ返却口の目と鼻の先に放置されたのか。
『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』
なぜか祭りのお釣りが五十円玉ばかり。
ご縁とかけた願掛けだというが、
それは祭りの直前に一人の若者からお願いされたらしい。
『針宮理恵子のサードインパクト』
「開けて下さい」とドアを叩く吹奏楽部の男子。
中の部員が誤って鍵を閉めてしまったらしい。
しかし、次の日も彼は「開けてください」とドアを叩く。
なぜ彼はいつも練習場から閉め出されるのか。
『天使たちの残暑見舞い』
卒業生が残した体験談。
教室にいたはずの女生徒二人が忽然と姿を消した。
唯一の出入り口、ドアから目を離していない。
では、二人の女生徒は一体どこへ消えたのか。
『その花瓶にご注意を』
廊下の花瓶が割れた。
花、水、破片が廊下に散らばる。
にも関わらず、誰も割れた音を聞いていない。
花瓶を割ったのは誰?
おまけ 掌編『世界一居心地の悪いサウナ』
仲の悪い男と少年がたまたまサウナで居合わせた話
著者 : 青崎有吾
タイトル : 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
シリーズ : 裏染天馬シリーズ #3
出版社 : 東京創元社
レーベル : 創元推理文庫
判型 : 文庫判
ページ数 : 292ページ(文庫)
発行日 : 単行本 2014 / 4 / 25
文庫本 2017 / 7 / 21
2015 本格ミステリ 8位
感想
シリーズ初の短編集!
殺人事件の謎を解いていた前2作と違って、今作に収録されている短編は全て人の死なないミステリ日常の謎。
短編は趣向を変えて日常の謎か! と思ったが、高校生がメインキャラクターで短編の数だけ殺人が起こるのは流石に多すぎる、ってのもあるのかな。
……まあ、高校生(小学生)が殺人事件の巻き込まれまくる「名探偵コナン」とかはあるけれど
何はさておき小説の感想。
前2作とは違い、キャラクター達に焦点を当て、その個性が掘り下げられている。
が、ただのキャラクター小説になったわけではなく、このシリーズの肝である謎解きの部分は、作者の持ち味である論理的な推理でキッチリと練り上げられている。
「もう一色選べる丼」「風が丘五十円玉祭りの謎」は動機に意外性があって面白い。
「もう一色選べる丼」は話はもちろん面白いが、タイトルもいい。
多分、というか明らかに太鼓ゲームのパロディ。
もしかしてタイトルから決めたんじゃないか?
また、「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」では、現象とそれを起こした動機の規模が違い、そのちぐはぐさがミステリ的な面白さに拍車をかけている。
せこい動機だ、と思ったら作中で柚乃が代弁してくれた。
「針宮理恵子のサードインパクト」「その花瓶にご注意を」は、いつもの柚乃視点ではなく、前者は針宮理恵子視点、後者は裏染鏡華の友達視点になっているため、作品の雰囲気がガラリと変わる。
「針宮理恵子のサードインパクト」はこのシリーズでは珍しく男女のラブコメ要素が入っている。
ミステリ的な要素は少し弱めだが、伏線がしっかりとあり、一瞬で謎を解く天馬の慧眼がかっこいい。
このエピソードをへて、針宮、早乙女ペアの関係が今後どうなっていくのか気になる。小説の中で書かれるのだろうか。
……ところでこの作品、百合のラブコメが多すぎないか
「その花瓶にご注意を」はかなりの変化球で、初登場のキャラ視点のうえ、探偵役は天馬ではなく妹の鏡華と異色続きの短編。
「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」でもそうだったが、裏染鏡華が登場するとかなりライトノベル感が増す。というよりも百合展開があるとライトノベルぽくなるのか。
そして、この話で語り部である新キャラの名前は仙堂姫毬。父親は警察官。
警察官の仙堂……
姫毬はいつか再登場して物語に絡みそうだな。
「天使たちの残暑見舞い」密室人物消失ミステリ。個人的にこの短編が一番好みだった。
5年前のOBが残したノートに書かれた体験談なので、実際に合ったかもわからない、というのがかなりワクワクした。
そして、意外なトリックに「おお、それを使うのか」と思わず膝を打った。
5編とも違った味わいの短編でバラエティに富んでおり、すごく面白い短編集だった。
ところで、ミステリで「五十円玉」と聞いて思い浮かべるのは、やはり「競作 五十円玉二十枚の謎」でしょう。
多分、青崎先生もこの作品を意識して「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」を書かれたと思います。
この作品は、小説家である若竹七海先生が実際に出会った謎。
若竹先生がアルバイトしていた際、毎週土曜日に五十円玉二十枚を握りしめた男が千円札に両替してもらいに来るが、男の素性、目的は不明。
この謎にプロ、アマの小説家13人が挑んだ競作アンソロジー。
法月綸太郎先生、有栖川有栖先生、デビュー前の倉知淳先生などが参加したアンソロジー作品。
題材もすごく面白そうでめちゃくちゃ気になっている。
どのくらい気になっているかというと、もう十年ぐらいこの作品が気になっている。
……早く読めよと言われても、書店に全然おいていないのだからしょうがない
予約以外であまり紙の本をネットで買わないが、絶版になるかもしれないのでAmazonで買っておこうかな……
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