地獄の20連勤をしたため更新が滞っていました。
読書も滞っています。
『難問の多い料理店』結城真一郎 集英社
ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生の「僕」は、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771870-6
彼は虚空のような暗い瞳で、「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、嘘みたいな儲け話を提案し、あろうことか僕はそれに乗ってしまった。
そうして多額の報酬を貰っているうちに、僕はあることに気づく。
どうやらこの店は「ある手法」で探偵業も担っているらしい、と。
不自然な焼死体が出たアパート火災、空室に届き続ける置き配、 謎の言葉を残して捕まった空き巣犯、なぜか指が二本欠損した状態の轢死体……。
オーナーは、配達員に情報を運ばせることで、どんな謎も華麗に解いてしまう。
そして、配達員にこう伝えるのだ。
――「口外したら、命はない」と。
連作短編集なのだがその中の最初の二編。つまらないわけではないがフードデリバリーという設定をあまり活かせていなくて、普通の安楽椅子探偵ものとなんら変わりなく正直肩透かしを喰らった。がしかし、三編目からはしっかりと設定を活かしており、フードデリバリーを絡めた事件で面白かった。
真相に驚きがなくミステリ的には物足りなさを感じるが、ただ事件を解決して終わりではなく、あくまでも料理人であって探偵ではないというオーナーシェフの信念と、事件に触れたことによって配達員に人生の転機が訪れる構成も良い。
『明智恭介の奔走』今村昌弘 東京創元社
彼は名探偵なのか、ただのトラブルメーカーなのか。『屍人荘』以前、神紅大学ミステリ愛好会会長・明智恭介が遭遇した五つの事件を描く待望の短編集!
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488029067
本編である『剣崎比留子シリーズ』はホラー風味の特殊設定ミステリだったが、本作のジャンルは日常の謎でホラー要素は皆無。
『屍人荘の殺人』で事件名だけ語られた宗教学試験問題漏洩事件などを含む短編集。
葉村君が語り部でなかったり、
ミステリ好きなら知っているであろうあの日常の謎に挑戦したり、
明智先輩が1回生の時に出会った事件など、バラエティに富んでいる。
ただ事件の真相を明智先輩たちが確信した最後の証拠を読者に隠したまま解決編に移るので、本格ミステリとしてはややアンフェア感が拭えない。
が、短編一つ一つに違う味付けがされていて、それでも面白くなるように工夫されておりよくできていてミステリとしてちゃんと面白い。
今村昌弘先生の作品はデビュー作もそうだったが、文章がかなり読みやすく状況が分かりやすい。
内容も面白いので他人にオススメしやすい作家です。
コメント