【ミステリ】2月発売の新刊を読んだ感想【2024】

  読む前の印象はこちらから⇩

単行本『ミノタウロス現象』潮谷 験 KADOKAWA

あらすじ
モンスターパニック×不可能犯罪。
 近い将来、人類はこの怪物に駆逐されるのか。そんな世界で、不可能犯罪が起こった。
 目の前には三メートル超えの怪物、背後には震える少年。好感度を何よりも重視する史上最年少市長・利根川翼は、人生最大のピンチに陥っていた。だが、その危機からの脱出直後、「異様な死体」が発見される――。
 容疑者の一人になってしまった翼は、自身の疑惑を晴らすために謎解きを始める。
『スイッチ 悪意の実験』『時空犯』で話題の新鋭が挑む、渾身の本格ミステリ。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322310000279/

ミノタウロスが突然出現する現象の解明と比べて、殺人事件の扱いが悪く、犯人特定のロジックも甘めなため、本格ミステリとして物足りなさを感じました。


どんどん読んでいるうちに。「殺人事件の犯人とかトリックとかどうでもいい! とにかく何で突然ミノタウロスが出現するのかの謎を知りたい!」って気持ちになっていきました。

本格ミステリとしてはいまいちに感じたが、ミノタウロスが突然出現する現象の解明が作品のメインと捉えると、なかなかに面白かった。

ただ、ひとつ気になったのはミノタウロスを威嚇しようとして、主人公がエレキベースを弾くシーン。ベースをアンプに繋いでいる様子がないし、アンプを内蔵しているベースでもなさそう……
アンプに繋いでいないエレキベースの音はかなりしょぼいので、想像するとかなりシュールなシーンになる……

もしかして、作者はアンプに繋がないとエレキベースの音が鳴らないのを知らなかった……?
まあ、ミノタウロスが突然現れる世界。アンプなしでエレキベースが鳴ってもおかしくないけど

書誌情報

発売日:紙版 2024/ 2/ 2   電子版 同日
出版社:KADOKAWA
予価 :¥2,145(税込)紙版 
判型 :単行本 四六変型判
ページ:248ページ 紙版

文庫『奇岩館の殺人』高野 結史 宝島社

あらすじ
 孤島に立ついびつな形の洋館・奇岩館に連れてこられた日雇い労働者の青年・佐藤。到着後、ミステリーの古典になぞらえた猟奇殺人が次々起こる。
 それは「探偵」役のために催された、実際に殺人が行われる推理ゲーム、「リアル・マーダー・ミステリー」だった。
 佐藤は自分が殺される前に「探偵」の正体を突き止め、ゲームを終わらせようと奔走するが……。
 密室。見立て殺人。クローズド・サークル――ミステリーの常識が覆る!

https://tkj.jp/book/?cd=TD051356

いわゆる倒叙ミステリー
マーダーミステリの登場人物だとも、本当に人が死ぬことも知らないまま、ただのバイトだと思ってゲームに参加し、命の危機が迫っているのにバイトの契約のせいで推理をすることが許されない“佐藤”視点の緊張感
不測のトラブルに見舞われながらも、マーダーミステリというゲームを壊さないように裏で奔走するゲームの運営会社の社員“小園間こえんま”視点のドタバタコメディ感
この二つの視点の緩急がいい味を出していて楽しい

解決編の推理もどんどん予想外の方向に転がっていき面白かった

書誌情報

発売日:紙版 2024/ 2/ 6   電子版 同日
出版社:宝島社
予価 :¥840(税込)紙版 
判型 :文庫判
ページ:320ページ 紙版

文庫『黄土館の殺人』阿津川 辰海 講談社タイガ

あらすじ
シリーズ累計18万部
若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ

 殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
 復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
 そのとき土砂の向こうから女の声がした。

 声は、交換殺人を申し入れてきた――。

 同じころ、大学生になった僕は、
 旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
 荒土館に滞在することになる。
 孤高の芸術一家を襲う連続殺人。
 葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000386142

シリーズの前作が面白かったので今作も期待していたのだが、前作の面白さを超えてこなかった

前二作と違い災害による命の危険性が薄まり、そのハラハラ感が無くなったのが残念だが、
序盤は犯人視点から書かれた“探偵”葛城との知恵比べ倒叙ミステリー
中盤以降は田所視点で書かれたクローズドサークルの館ものの本格ミステリ
と、前二作とは読みごたえが違っていた点は面白かった。

物語の中盤、離れを調べに言ったシーンのあたりの文章の乱れが酷い
たぶん展開を描き直した後の推敲不足だと思うのだが、離れを調べ終わってすぐに別の場所で事件に関係ありそうなものを見つけ、離れを調べるのは後回しにすると書かれていたり、
離れに入った描写の次の行で離れに入るのをためらう描写があったり、
車椅子がいつの間にかなくなっていることになったり、
などおかしな所が多々

それと第三の殺人において、被害者があの時間あの場所にいたのは、地震という不確定要素とそれに伴い起きた事象の結果であり偶然なので、あのトリックを使っての殺害は流石に無理があると思う

気になる点は多かったが、館側の犯人がクローズドサークルという不利な状況で交換殺人を申し入れた理由など、真相には意外性があってミステリとしては面白かった

書誌情報

発売日:紙版 2024/ 2/ 15   電子版 同日
出版社:講談社
予価 :¥1,320(税込)紙版 
判型 :文庫判
ページ:640ページ 紙版

単行本『帝国妖人伝』伊吹 亜門 小学館

犯人は誰? 探偵こそ誰?
時は明治、那珂川二坊は文学で名をなさんとす。尾崎紅葉に師事すれど執筆がかなうのは小説どころか三文記事ばかり。この日も簡易食堂に足を運び、ネタを探して与太話に耳を傾けた。

どうやら昨晩、かの徳川公爵邸に盗人が入ったらしい。蓋を開ければ徳川公にも家人にもこれと云った被害はなく、盗人は逃走途中に塀から落ちて死んだという不思議な顛末。酔客らは推論を重ねるが、「そりゃ違いますやろ」という声の主、福田房次郎が語り始めたのは、あっと驚く”真相”だった(「長くなだらかな坂」)。

京都・奈良をつなぐ法螺吹峠、ナチス勃興前夜のポツダム、魔都・上海ほか、那珂川の赴く地に事件あり、妖人あり! “歴史・時代ミステリの星”伊吹亜門が放つ全5話の連作短編集――

https://www.shogakukan.co.jp/books/09386702

小説家 那珂川二坊が事件に出くわし、たまたま出会った人が探偵役としてその事件の真相を解明する。
その探偵役が実は、実在の歴史上の人物だったというのが最後に明かされる構成

僕は歴史とかそういったのにかなり疎いので、最後に明かされても驚きは少なかった。少しでも知っていたらもっと面白く読めたのだろうなと考えるとかなり悔やまれる。
……だからといって、これを機会に歴史を詳しく調べるなんてことはしないが

時代小説なので文体にもその気があり、そのおかげで作品にいい雰囲気が出てるのだが、ミステリでもない限り時代小説をあまり読まない身からすると少しの読みづらさがあった。

正直、ミステリとしては小粒。だが、読んでいくうちに主人公の那珂川二坊の魅力にどんどんハマっていく。とくに幕間からの展開は……

書誌情報

発売日:紙版 2024/ 2/ 15   電子版 同日
出版社:小学館
予価 :¥1,870(税込)紙版 
判型 :単行本 四六判
ページ:256ページ 紙版

単行本『そして誰かがいなくなる』下村 敦史 中央公論新社

大雪の日、大人気作家の御津島磨朱李が細部までこだわった新邸のお披露目会が行われた。招かれたのは作家と編集者、文芸評論家と……。最初は和やかな雰囲気だったが、次第に雲行きが怪しくなっていく。奇想天外、どんでん返しの魔術師による衝撃のミステリー!

https://www.chuko.co.jp/ebook/2024/02/518828.html

実在する著者の自邸を舞台に書かれた小説
(ここで邸宅の紹介がされています。「https://www.univer-sys.com/atsushi-shimomura/」)

本当にあるのか? 住んでいるのか? そう疑いたくなるほど素敵な家。
自邸を舞台にするという発想も面白いが、舞台になりそうな洋館を実際に建てて住んでいるところも面白いですね

トリックが単純で簡単に見破れそうな点は残念ですが、人物視点を次々に変えることによって事件をより不可解にし、読者を巧みにミスリード。真相も、一捻り、二捻りも効いてて面白いです。
トリックが単純だと書いたが、真相に捻りがあるぶん、このくらいの方が複雑化せずに読みやすくていいのかもしれないです

書誌情報

発売日:紙版 2024/ 2/ 21   電子版 同日
出版社:中央公論社
予価 :¥1,980(税込)紙版 
判型 :単行本
ページ:320ページ 紙版

単行本『毒入り火刑法廷』榊林 銘 光文社

この魔女裁判から逃れられるはずがない。だってわたしは、本物の魔女なのだから。
十数年前、突如現れた“魔女”――箒に乗って空を飛び、黒猫に化けることができ、近くにいる人の感情を操ることができる存在。文明社会の秩序を脅かす魔女たちを取り締まる司法が“火刑法廷”であり、この裁判で魔女と認定された者は火炙りとなる。ある日、空を飛行したのでなければ不可能な死亡事件が起こる。魔女と疑いをかけられた被告の少女カラーをじっと見つめるのは、被害者の義娘となる予定だったエリス。エリスは知っていた。あの夜、本当は何が起こっていたのかを――
法廷を制した者が真実となる。そのためなら犠牲は厭わない。

https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334102272

魔女が存在する世界での裁判を書いた特殊設定ミステリ

作者が意図的に隠した設定や詰め込んだアイディア、次々に変わる人物視点のせいで構成がごちゃごちゃしていて、設定や状況の理解がしづらかった印象。

ただ、ごちゃごちゃさせただけあってか、小説のメインである法廷部分は面白い。

魔女であることを否定するために弁護人が被告人を殺人犯に仕立て上げたり、審問官は被告人が魔女であることを証明するために事件と無関係の人間を魔女と認定(事件に無関係でも火刑法廷で魔女と証明された場合、火刑に処される)したりなど、ひねくれた推理のオンパレード。

事件の真相がどうであるかよりも、いかに被告人が魔女であることを証明するか否定するかに裁判の主軸が置かれているいわゆるアンチミステリ的な部分が非常に面白い。

(ネタバレ注意)作中最後で明かされなかった謎についての僕の推理⇩

書誌情報

発売日:紙版 2024/ 2/ 21   電子版 同日
出版社:光文社
予価 :¥2,200(税込)紙版 
判型 :単行本 四六判ハード
ページ:408ページ 紙版

ミステリ
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