
発売日:2025/ 5/ 30 電子版あり
出版社:東京創元社
予価 :¥1,980(税込)紙版
判型 :四六判仮フランス装 単行本
ページ:288ページ
あらすじ
過疎化が進んだ町で小学校時代を過ごした大地は、二十年以上前の卒業以来初めて東京で同級生二人と再会する。虫取りやスイカ割りなどのノスタルジックな思い出話は、自然と五年生の時に起こった事故の話に移っていく。リーダー格の少年・翔貴が沼に落ちて昏睡状態となり、目覚めぬまま最近亡くなった水難事故の真相とは?
嘘つきたちへ - 小倉千明|東京創元社嘘つきたちへ 過疎化が進んだ町で小学校時代を過ごした大地は、二十年以上前の卒業以来初めて東京で同級生二人と再会する。虫取りやスイカ割りなどのノスタルジックな思い出話は、自然と五年生の時に起こった事故の話に移っていく。
感想
表題は収録短編のタイトルではあるが、表題作以外の収録作四編ともタイトル通り”嘘”がキーワードになった短編集。
短編という短い中で二転三転する物語は読み応えがあり、面白かった。
ただ、アンフェア気味なので本格ミステリとしてはあんまり。
前半三作はいいのだが、後半の二作は “嘘” で物語を動かすと言うよりも、読者を騙してやろうといった方向性で書かれているように感じたのはマイナスポイント。
ミステリとして、しっかりとした面白さはあり、文章も読みやすい。次作も期待できそう。
以下、各短編のあらすじと感想
このラジオは終わらせない
生放送のラジオの中の話。
パーソナリティが読んだリスナーからのメールには、マネージャーと放送作家を含めた3人の共通の知り合いが投稿したものだった。その知り合いとは放送作家の彼女であり、作家はそのメールを採用していないと言う。
何だか歯切れの悪くなってしまった作家と、様子がおかしいマネージャー。一体、何が起きているのか──
明らかに何かが起きているが、話し合えるのはCMと曲中だけ。徐々にブースないは険悪になるが、生放送のラジオは滞りなく続けないといけない。という設定が楽しい。
一編目で心をつかまれたので、これが最初に収録されているのはナイスだった。
ミステリ好きな男
大雨のせいで帰れなくなり、たどり着いた人家で雨宿りさせて貰う見ず知らずの6人。
同級生だと言う二人組の高校生以外は、たまたま出会ったはずだが、一人を除いた五人には何故か共通点があった──
いわゆるクローズドサークル。
この場で事件が起きるわけではないのだが、ある事件の犯人がこの中にいるかもしれないと、犯人探しが始まる。
終盤、語り部がとる謎の行動からのオチが好き。
この短編が一番好みだった。
赤い糸を暴く
「実は私、小さい頃から赤い糸が見えるんです。安心してください。あなたとお連れの方はちゃんと赤い糸て繋がっています」
新幹線で近くの席になった女性はそう言って、自分の身の上を話し始めた──
ほぼ地の文なしで赤い糸が見えるという女性が身の上話をする物語。
その話から導き出される赤い糸の意味を紐解くと、ゾッとするような真実が見えてくる。
赤い糸が見える女性が”嘘つき”だとすると話の様相が変わるのが面白い。
好みなのは「ミステリ好きな男」だけど、この本を誰かに勧める時はこの短編を推すかな〜
保健室のホームズ
保健室登校の転校生は予想に反しておしゃべりな奴だった。
「僕が探偵だったらどんなに良かったか」
彼のその一言から、日常の気になる謎を探して解く遊びが二人の間で流行り、謎を通して二人の仲は深まっていく。
この話は語り部が読者を騙そうとしている感があり、本格好きとしてはイマイチと思ってしまった。
ただ、それは本格ミステリとして読んだ時の評価で、物語全体としては、ちょっとあからさますぎるところが気になるが、しっかり伏線も張り巡らされていて面白かった。
嘘つきたちへ
二十年ぶりに再開した三人は、小学生時代を回想する。そして、話題はこの場にいないリーダー格だった少年を襲った事故の話へと移っていく。
受賞作だし、表題だし、最後に収録されてるし、で期待してたのだが、これが一番微妙だった。
物語の構造を成立させるために、登場人物が馬鹿だったり、やたら精神力が強くなっていて「いやそうはならんだろ」と思った。
ただ、かなり大胆な伏線の張り方には好感が持てる。
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