伊吹亜門『刀と傘 明治京洛推理帖』 あらすじ、感想 ― 時代小説×本格ミステリ


書誌情報

  著者 : 伊吹亜門いぶきあもん
タイトル : かたなかさ  明治京洛推理帖めいじきょうらくすいりちょう
シリーズ : 明治京洛推理帖シリーズ
 出版社 : 東京創元社
レーベル : ミステリ・フロンティア
  判型 : 四六判仮フランス装
ページ数 : 304ページ(文庫)
 発行日 : 2018 / 11 / 30(単行本)

     2023 / 4 / 19(文庫)

受賞・ランキング

ミステリーズ!新人賞 第12回(2015)受賞
本格ミステリ大賞 第19回(2019)受賞



2020 ミステリが読みたい    1位 
2020 本格ミステリ       4位 
2020 このミステリーがすごい  5位 
2019 週刊文春ミステリー   10位 

 

あらすじ

 時代は幕末、尾張藩士の鹿野師光かのもろみつは新政府と旧幕府の武力衝突を避けるための活動に奔走していた。

 そんな中、同志である五丁森了介ごちょうもりりょうすけから江藤新平えとうしんぺいという男を迎え、鹿野を含め4人の同志しか知らない五丁森が身を隠す家まで連れてきてほしいと頼まれる。

 後日、鹿野が江藤を迎えて隠れ家まで連れて行くと五丁森は何者かに切られ殺されていた。

 江藤は五丁森に擦り寄ることで出世しようと目論んでいたが当てが外れたため、五丁森を殺した犯人を暴くことで名を上げようと事件解決に動く。

 鹿野はそんな江藤に嫌悪を抱きながらも事件解決に協力することになる。

【佐賀から来た男】

 

 他、

 密室で見つかった切腹死体。自殺で処理されそうな事件を江藤と鹿野は殺人事件だと確信し、密室の謎を解く。
【弾正台切腹事件】

 

まもなく斬首される男が獄舎内で毒殺された。なぜ処刑される男を犯人は殺したのか?
【監獄者の殺人】

 

 妾の女が主人と女中を殺し、さらに匿っていた脱走犯を殺して罪を擦り付ける場面から書かれる倒叙ミステリ。江藤はどうやって証拠を掴むのか?
【桜】

 

 容疑者は江藤。彼以外に犯行不可能な事件で江藤はどうやって真犯人にたどり着くのか?
【そして、佐賀の乱】

 

 以上の五編からなる連作短編集

 

感想

 物語の軸は二人の人物、尾張藩士の鹿野師光かのもろみつと佐賀藩士の江藤新平えとうしんぺい

 そのうち、江藤新平は実在した歴史上の人物なので、歴史の授業などで一度は名前を聞いたことがあるだろう。

 「刀と傘」は鹿野と江藤、この二人の探偵役が事件を解決していく本格ミステリだ。

 コンビで事件を解いていくのはミステリの定番だが、片方はいわゆるワトソン役になる。どちらも探偵役というのは珍しい。

 また、複数の探偵役がいると、普通は互いに別々の推理を披露しあう多重解決ミステリになるのだが、

 江藤は名を上げて出世するために事件を解決するため、誰が? どうやって? を重視して捜査を行い。

 逆に鹿野は、なぜ犯行に至ったのか? という動機の方を重視する。

と、推理において役割分担ができているため、二人の探偵役がライバルではなくコンビとして書かれているのがとても面白い。

 短編の一つ一つが面白いのだが、物語を通して書かれる事件において重視してるものが違う鹿野と江藤の関係性の変化にも注目して読むとさらに楽しめる

 刀と傘は、時代小説に本格ミステリを混ぜたものなので、歴史に詳しくない人は避けてしまうかもしれないが、この作品は歴史に詳しくなくても楽しめます。

 僕も歴史に詳しくなく、物語の主人公である江藤新平も名前は憶えている程度の知識だったが、かなり楽しく読めた。

 逆に歴史に詳しくないからこそ、江藤新平がどうなっていくのかも楽しめたので、歴史に詳しくないって人にほどオススメ

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