初めに
2017年に発売された阿津川辰海先生のデビュー作。
証拠を捏造し、自らが犯した犯罪を隠蔽した疑いで探偵が裁判にかけられる法廷ミステリ。
そこに、死者が神様の力を借りて幽霊としてこの世に残ったり、生前の記憶を持ったまま他人の死体で転生したりとファンタジーな要素を加えたうえで、しっかりと本格ミステリとして仕立てられています。
あらすじ
探偵が警察の下部組織として存在している世界。
探偵機関で探偵として働く阿久津透は、探偵弾劾裁判にかけられようとしていた。
その理由は十九年前の事件で証拠を捏造し、犯人Xという存在しない殺人犯を生み出したという疑い。
阿久津に不信感を募らせていた探偵助手の火村つかさは、十九年前の事件で阿久津に出し抜かれた刑事に裁判の証言人に誘われ証言台に立つことになった。
さらに、証言人の中には転生した死者もいて――
事件の犯人はXだと推理する阿久津。
はたして、探偵・阿久津透は本当に嘘をついていないのか?
感想
幽霊に転生とやりたい放題の特殊設定法廷ミステリ。
序盤は弾劾裁判の準備と、転生のルール説明パートって感じで、かなり退屈な印象だったが
しかし、裁判の議題でもある探偵・阿久津透が推理した十九年前の密室事件のトリックは、二重にも三重にも張り巡らされていて、かなり練られており、これには舌を巻いた。
中盤からの展開は見事でめちゃくちゃ面白く、序盤ではページを繰る手が重かったのが嘘のように次々とページをめくってしまった。
トリックの説明で少し首をかしげることがあったが、それを差し引いても魅力的なトリックで、意外な犯人と本格ミステリして大満足な作品だった。
この小説は10の章で出来ており、その章の名が全てミステリ作品から取られたものとなっている。
その作品をすべて読みたくなる最高のミステリだった。
まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみては!
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