初めに
第22回 鮎川哲也賞を受賞し、2012年に刊行した青崎有吾先生のデビュー作。
裏染天馬シリーズの第一作目になります。
密室になった体育館の舞台で起きた殺人事件に、部室棟の一室に勝手に住んでいる、アニメオタクで変わり者の生徒、裏染天馬が私欲のために事件解決に乗り出します。
次作 「水族館の殺人」 裏染天馬シリーズ#2
あらすじ
普段から部活で使っている学校の体育館。いつもと違うのは舞台上の幕が下ろされていること。
部活の準備にやってきた演劇部が、不思議に思いながら幕を上げると、そこには放送部部長の刺殺死体が!
だが、犯人の姿はどこにもない!
舞台袖にある外への出入り口には全て鍵が掛かっており、舞台下の競技場には犯行時刻前から部活の準備をしているバトミントン部がいて、誰にも気づかれずに逃げ出すのは不可能。
自然と殺人の容疑は、犯行時刻に体育館に一人でいたバトミントン部の部長にかけられた。
バトミントン部の一年生、袴田柚乃は部長が犯人なわけがないと信じるが、容疑を晴らす手段がわからず途方に暮れる。
そんな柚乃が頼ったのは、中間テストで全教科満点を取るほど頭が切れ、部室棟の一室に学校に無断で住み着いていると噂されている変人のアニメオタク。
裏染天馬だった――
感想
探偵役である裏染天馬は重度のアニメオタクで、学校に無断で住み着いている百人一首研究会の部室にはアニメグッズが溢れている。
さらには、相手がアニメを知っていなかろうとお構いなく、アニメ作品を使った例えを頻繁に口にする。
(その例えで使われているのは実在のアニメなので、わかる人は楽しい。刊行時(2012)よりも前の作品なので、少し古いが)
ここまでの情報だと、謎解きよりもキャラを重視したライトなミステリという印象を受けるが、探偵役の裏染天馬は、そのふざけたキャラからは想像もつかないほど論理的な推理を用いて、あざやかに事件を解決する。
この作品はライトなミステリの肝である魅力的なキャラを取り入れながら、読者への挑戦状を挟むほど、謎解き要素に力を入れた本格ミステリである。
読みやすい文体で登場人物も魅力的なのでスラスラと読めてしまう。特に、警察をも手玉に取る裏染天馬のキャラクターを愛せずにはいられない。
このブログの青崎有吾の記事
「水族館の殺人」 裏染天馬シリーズ#2
「早朝始発の殺風景」 連作短編集
コメント