早坂吝『殺人犯 対 殺人鬼』あらすじ、感想 ― ターゲットが殺される前に殺せ

書誌情報

  著者 : 早坂吝はやさかやぶさか
タイトル :
殺人犯さつじんはん たい 殺人鬼さつじんき
 出版社 : 光文社
レーベル : 光文社文庫
  判型 : 文庫判ソフト
ページ数 : 290ページ(文庫)
 発行日 : 2022 / 5 / 11(文庫)
【単行本発売日 : 2019 / 5 / 24】

受賞・ランキング

2020 本格ミステリ       11位 
2020 このミステリーがすごい  17位 
2019 週刊文春ミステリー    20位 

あらすじ

 網走一人あばしりひとりは孤島に建てられた児童養護施設にしている中学生。

 天候の悪化で職員がしばらく島に戻ってこれなくなり、児童だけで過ごすことになった。これを好機と網走一人は計画を実行に移す。

 それは同じ施設の入所者、剛竜寺翔ごうりゅうじしょうを殺すこと。

 だが剛竜寺はすでに殺されていた! しかも死体の左目は繰り抜かれ、空っぽになった眼孔には果物のキンカンが詰められている。

 誰がこんな猟奇的な殺し方を? 外部の人間が誰にも気づかれずに島に上陸することは難しい、内部犯か? 次は自分が狙われるかもしれない、嫌だ死にたくない。

 それに、こんな猟奇的な殺し方をするんだ。犯人は無差別殺人鬼かもしれない。

 まだ殺さないといけないターゲットが残ってる。また先を越されたらたまったもんじゃない。

 代わりに殺してくれてラッキーではないのだ。

 ”ターゲットはこの手で殺さなければ意味がない

 

感想

 「殺人犯 対 殺人鬼」は、語り部である網走一人の他にいる猟奇殺人犯が誰かと、なぜ犯人は猟奇的な殺し方をしたのかを考える本格ミステリだ。

 網走は同じく施設の入所者であり、探偵気取りの探沢たんざわジャーロとともに先頭に立って事件を調べていく。

 だが、網走の目的は犯人の確保ではなく、相手よりも先に自身のターゲットを殺すことであるため、事件を調べる傍ら計画殺人を成功させるため奔走する。

 網走は計画殺人を企てて隙を見てターゲットを殺そうとしているのだが、ターゲットでない児童が危険な状況になったときに、万が一がないように慎重に助けたり、死ななくてよかったと思ったりとなんだか憎めない性格をしている。

 猟奇犯の目的がなんなのかも見どころだが、網走が先にターゲットを殺し、計画殺人を完遂できるのかも注目です。

 文章が軽快でかなり読みやすく、すいすい読めた。

 なんでもないようなシーンにもサラッと伏線が隠れていて、解答編を読んでるときは何度もページを戻って張られた伏線を確認し、これも伏線だったのかと驚かされました。

 また、絶妙なミスリードも隠れており、あいつが怪しいなと思ったら全然違ったりと、完全に作者の手の平で踊らされました。

 読むときはくれぐれもミスリードに引っ掛からないように!

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