初めに
1989年刊行の有栖川有栖先生のデビュー作です。
江神二郎シリーズの1作目。
学生アリスシリーズとも呼ばれています。
火山の噴火により、下山ルートが塞がれてしまった四組の大学生グループ。噴火の恐怖に怯えながら救助を待つ一行だが、その中の一人が刺殺死体で発見される。その死体の傍らには “y” のダイイングメッセージが!!
誰が犯人なのか、いわゆるフーダニットをメインにした作品ながらも、大学生たちの青春、噴火によっておこるパニックと面白さの幅が広い。
あらすじ
たまたま同じ日、同じ山にキャンプにきた四組の大学生グループ。ここであったのも何かの縁と、四組で仲良くキャンプを楽しむのだが、ある朝、先に下山すると書置きだけを残し、みんなが寝静まった夜中のうちに一人がいなくなった。そのことに気づき、探しに行こうとした矢先、山が噴火した。
噴火で下山ルートが潰れたため、キャンプ場での立往生を余儀なくされた一行は、いつまた噴火するかわからない山に怯えながら救助を待つが、一人が刺殺死体で発見された! その傍らには被害者の残した “y” のダイイングメッセージが――
犯人は一体、誰? そして、“y” のダイイングメッセージ意味とは?
感想
クローズドサークルは、待っていれば必ず開かれるもの。
この作品は噴火という要素で、クローズドサークルが開かれるのをただ待っているわけにはいかない。という緊張感を持たせている。
こういうパニック系のクローズドサークルすごく好きなんですよね。
誰が殺人犯なのか疑心暗鬼になりながらも、危機的状況には協力が不可欠。みんなで協力しながら危機に立ち向かっているはずなのに、また一人と殺される。この緊張感が堪らないです。
また、この作品は、推理小説の中に青春小説という側面も持っている。
たまたま鉢合わせた四組の大学生たちが、どんどん仲を深め大きな一つのグループになっていく。火山の噴火により、仲はさらに深まる。
しかし、殺人事件でその仲に陰りを見せるが、噴火という災害にまた少しずつ仲を取り戻し、解決編ではただの一読者である僕までこの中に犯人がいてほくないと願わずにはいられませんでした。
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