紹介
2022年に刊行された夕木春央先生の作品
年末のミステリランキング全てで上位に入り、本屋大賞と本格ミステリ大賞にもノミネートされた、2022年の話題作です。
この小説のあらすじ
地震により、地下建築に閉じ込められた十人。
地下建築は地震の影響で浸水し始めており、近いうちに水没してしまう。
救助は期待できない。だが、脱出方法はある。
しかし、その脱出方法は誰か一人が犠牲になる必要があった。
こんな状況で何故か殺人が起こる。
犯人を見つけなければならない。
犠牲なるべきなのは犯人なのだから。
感想
クローズドサークル×パニック、と僕好みの設定。やっぱり時間が経てば開かれるクローズドサークルよりも、時間が来たら全滅してしまう設定の方が読んでるときの緊張感があってすごく好きです。
まあ、今作は誰か一人が犠牲になれば出られるという設定の都合上、あまりその緊張感はなかったのですが……
でも話題になるだけあってめちゃくちゃ面白い!
この誰か一人が犠牲にならなければ脱出できない状況で、犯人自身の首をも絞めてしまう殺人を行う合理性が全く思い浮かばなかった。なぜだ? と考えれば考えるほど先が気になり、どんどん読み進めてしまう。
そして、小説のクライマックス。
正直、探偵役である翔太朗の推理には肩透かしを喰らった。真相はこんなもんかと熱が冷める感じ。だが、そこからの展開がめちゃくちゃ面白い! まさかまさかの展開でそうきたか! と思わず膝を打つほどのインパクト。
だが、設定から嫌な感じが漂っていたが、やはりラストは後味が悪く嫌な読後感……
でもめちゃくちゃ面白い! ……が、一つだけ不満がある。
それは登場人物の魅力が薄いこと。主人公たちは大学の友人であるのにも関わらず、全員が距離感を保っているように感じる。
主人公の一人称視点で、序盤で殺人が起こったせいでみんながみんな警戒している。ということもあるだろうが、それにしても読後に登場人物の印象が残らない。ストーリーがインパクト大で強烈な印象を残しているだけにこれは残念だった。
でもやっぱりめちゃくちゃ面白いので、この小説を読めてよかった。
本作で初めて夕木春央先生の作品を読んだのだが、他の作品も読みたくなるほど『方舟』は面白い小説だ。
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