あらすじ
図書委員の堀川次郎は同じ図書委員の松倉詩門と仲良くなってから、何故かおかしな謎と関わることが増えた。六つの短編からなる青春ミステリー
『913』
図書室の先輩から祖父が残した開かずの金庫の番号を調べてほしいと頼まれる。生前の祖父が言うには “おとなになったらわかる” そうだが?
『ロックオンロッカー』
「貴重品は、“必ず”、お手元にお持ちくださいね」
行きつけの美容室に松倉とともに来店した堀川。いつも言われる注意事項に何故かその日だけ“必ず”と念押しされた。一体なぜ?
『金曜日に彼は何をしたか』
委員の後輩の植田から、テスト問題を盗もうとしたと疑われている兄のアリバイを見つけてほしいと頼まれる堀川と松倉。兄はアリバイがあるから大丈夫だと言っているものの、なぜか誰にもそのアリバイを話さないらしい。
『ない本』
“自殺した生徒が最後に読んでいた本を探してほしい” なんでも、その本に遺書のようなものを挟むところを見たらしい。返却履歴を見れない二人は装丁などの少ない情報からその本を特定していく。
『昔話を聞かせておくれよ』
松倉から昔話をしようと持ち掛けられる堀川。桃太郎とかでいいと言われるが堀川は自身の昔話を語る。すると松倉も自身の昔話を語り始め……
『友よ知るなかれ』
『昔話を聞かせておくれよ』の続き。前話で解いた謎でおかしなところを見つけた堀川は市の図書館でその答えを探す。
感想
殺人事件の謎を解くミステリーであれば探偵役は他人のパーソナルスペースに土足で踏み込んででもすべての嘘を暴き犯人を見つけ出すが、日常の謎はそうはいかない
謎を解くためであっても、パーソナルな事柄を聞き出すのにはためらうし、そもそも相手は他人に隠したい秘密のために嘘をついているかもしれないので、謎を解くためだからと嘘を暴くのがいいとは限らない
さらに、悪事を暴いたからといって推理を大勢の前で披露することは相手の自尊心を酷く傷つけることになる
そのため、全編をとおして謎が解けて大団円というより、すこしほろ苦い結末をむかえます
そのほろ苦さが、謎を解くというミステリのならではの面白さに加わることで物語の深みが増しています。
短編集なので読みやすいうえに全編面白いので、ぜひ読んで欲しいです。
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「氷菓」古典部(氷菓)シリーズ#1
「愚者のエンドロール」古典部(氷菓)シリーズ#2
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